2.手紙の罠

 貯蔵庫の隅にあった、最後の一つの萎びたリンゴを薄切りする。パン籠の堅くなったパンも切り、グラタン皿に交互に重ねて並べ、砂糖とミルクを入れて溶いた卵液を注ぐ。それをオーブンに入れて、ギルは洗った手を拭きながらキッチンのテーブルに戻った。
 雑多に書類を突っ込んだ箱から、白い細長い封筒を選んで出す。三年前、浄化地の主に魔族が憑くという前代未聞の事件を解決する為にやってきた『思慕の花園』の主、マルセイヌ国の姫、カトリーヌ。その彼女の気の置けない友人で護衛兵士のモグラ型獣人、土竜族の戦士、トニーからの手紙だ。
 ギルは事件で彼を助けて以来、同じ土の力を操る能力を持つ一族同士として、彼に『先生』と呼ばれ慕われている。それは彼がカトリとマルセイヌに帰った後も続いていた。互いに忙しい身なので、あれからは会ってないが、定期的に手紙でやりとりをしている。
 謹慎前まで忙しく、読んだ後、箱に入れっぱなしだったトニーの手紙を封筒から出し、読み返しながら綴りに綴っていく。
 ギルはトニーに自分の地の力を読む術を指導をしている。どこまで教えたかを確認しながら、纏めていた手がふと止まった。
 それは彼にしては珍しく、言い訳めいた謝罪を綴った手紙だった。あの事件で、フェスもまたカトリと仲良くなり、頻繁に手紙のやり取りをしている。その中で去年の秋、彼女がフェスに送ってきた手紙に、カトリのキスを褒美にした武闘大会の話が書いてあった。その原因の発端がトニーの失態だったのだ。
 そのことをフェスから聞いたギルは、トニーに注意を促す手紙を送った。それの返事がこれだ。
『すみません。もう二度とこんな失敗はしません』
 散々綴られた文面を眺めて、思わず苦笑を浮かべる。
「お前がトニーを叱れる立場かって……」
 自分に向けて皮肉を吐きながら、椅子にもたれ掛かり、キッチンの天井を仰いだとき、オーブンから砂糖の焦げる甘い匂いがしてきた。
「おっ、出来たかな?」
 手紙と封筒、手紙の綴りを一旦箱に戻し、ギルはいそいそとオーブンに向かった。
「よし! 綺麗に焼けた!」
 鍋つかみでオーブンから、キツネ色に焦げ目のついたリンゴのパンプティングを出し、テーブルの上に乗せる。
「う〜ん、良い匂いだ」
 食器棚から取り分け用の大きなスプーンと小皿を出す。カタリとドアの開く音がして、春の衣替えの支度をしていた兄嫁ステラが入ってきた。
「はぁ〜、暖かいわ〜。あら? ギルちゃん、美味しそうなの作ったのね」
「うん、貯蔵庫に残り物のリンゴがあったから。義姉さんも食べる?」
「ええ、勿論!」
 火の気の無い部屋を回って、家族全員の春服のチェックしていた義姉の為に、暖かなお茶を入れようとケトルに水を入れて沸かし始める。
「ねえ、ギルちゃん。このギルちゃんの着れなくなった服、仕立て直してフリッツのにして良いかしら?」
 ほつれ直しやボタン付けの必要な服を入れた籠を置いて、ステラが数着、ギルの少年時代の服を息子……ギルには甥……に下げて良いか尋ねる。
「良いけど……もうフリッツ、ボクのその服が着れるようになったの?」
「ええ、最近、本当に大きくなっちゃって。袖は縮めなくちゃいけないけど、身幅はこれでピッタリみたい」
 ノーム族の男特有の巌のような筋肉の付かないギルに対し、フリッツは父であるフレッドに似て、同じ年頃の子供達の中でも抜きん出て、体格が良い。
「……これは……もうすぐ、ボク、フリッツに体格で抜かれるな……」
 がっくりと肩を落としながら、ギルがポットに茶葉を入れる。その様子にステラは小さく笑って首を縮めた。


 フリッツと母のエマ、そして意外と甘い物も好むフレッドの分のリンゴのパンプティングを皿に残し、二人で暖かいお茶を飲みながら、午後のお茶をする。
「フリッツは兄さん似の体格に、義姉さん似の顔立ちだから、きっとモテるね」
 甥っ子は、父と兄譲りの地に響くような声を持つせいで、滅多にしゃべらないが、義姉譲りの可愛い顔立ちに、にこにこといつも愛想の良い笑みを浮かべている子だ。
 今日は、祖母が、母エマの友人でもある、友達の女の子のお誕生会にお呼ばれして、エマと一緒に出掛けている。ふんわりアツアツのプティングを口に運びながら
「きっと、将来アーくんみたいになるよ」
 ギルは口を尖らせた。
「アーくんも、あんだけモテるんだから、より好みなんかしてないで、好きな子をつくっておけば良かったのに……」
 そうすれば、居場所が無いと森から出て行かなくても済んだかもしれない。顔をしかめる義弟に「森の一族の女性では難しいと思うけど」ステラが困った顔で答えた。
「確かに、アレンくんは格好良いけど、それだけで彼と恋人を続けていくのは難しいと思うわ」
 お茶を飲んで、小さく息をつく。
「私ね、アレンくんが強い女性が好きなのは、そういう女性でないと自分とはやっていけないことを無意識に自覚しているからじゃないかなって思うの」
 排他的な銀の毛並みの一族の中で、白い毛並みの彼と族長家族の役目を果たしていくのは、並大抵の女性では無理だ。
「多分ね、今まで断ったり、ふられたりしていたのも、そういう彼の無意識の選択に、その女性が合わなかったからじゃないかしら」
 女性の視線から見たステラの意見に、ギルは思わず唸った。
「それじゃあ……」
「森の外で、誰か……若頭の言うような『気は強いけど、おおらかな女性』が見つかると良いけど……ね」
 ステラが立ち上がり、コンロの上のケトルで、お茶のお代わりを自分と義弟、二杯分淹れる。二杯目のお茶にギルはミルクを落とした。
「難しいなぁ……」
 お茶を混ぜながらぼやく。
「でも、そういうギルちゃんはどうなのかしら?」
 ステラがイタズラっぽい笑みを浮かべて、身を乗り出す。
 ギルもまた男女共に友人はいるが、特定の女性とお付き合いというのは余りしたことが無い。
「まだ、結婚には早いけど、こうも女性の影が無いと、お義姉さん、心配しちゃうな」
 うっとギルがつまる。
「………あっ、片付けもボクがやるよ」
 ステラが楽しげに肩を震わせるのを後目に、あたふたとお茶を飲み干し、カップと皿を持ってギルは席を立った。


 暖を取るため、キッチンの火はそのままで、片付けたテーブルの上で、ギルは手紙の整理の続きを、ステラが出してきた服のくつろいをしている。
 シュンシュンとケトルが吹く音がする中
「あれ?」
 ギルの声が小さく響いた。
「どうしたの?ギルちゃん」
 顔を上げるステラに、ギルは手にした手紙を見ながら細い眉をしかめた。
「ちょっと、ここがおかしいんだ」
 それはトニーから最近来た手紙だった。カトリがある呪文を試していること、それが今年に入ってから成功してないことが綴られ、ギルの意見を求めるものだ。
「どこ?」
「ここ」
 覗き込んだステラに、藍色のインクで綴られた手紙を見せる。
「どこが?」
 インクも鮮やかに、綺麗に綴られた文字に、ステラが首を傾げる。ギルが手紙の一行を指した。
「ここ。ほら、文字が滲んでいるでしょ」
「あら? そうね」
 確かにギルの指差す先の文字のインクがうっすらとぼやけたように滲んでいる。
「トニーくんの方で、何かこぼしちゃったんじゃないの?」
 ステラの言葉に「それにしては乾いた跡がないな…」ギルは首を捻った。
「それにここ一列、縦に線を引いたように滲んでる」
 すっとギルが手紙をテーブルの上に置いてなぞる。滲んでいる文字の上下、数行がギルの言うとおり、そこだけ線を引いたようにインクが滲んでいた。
「これって…」
 ギルが二枚目、三枚目の便箋をめくる。滲みは下にいくほどはっきりと、同じように縦に数行、その位置の文字だけ滲んでいた。
 便箋を畳み直し、封筒を戻す。そして裏にひっくり返し、封をするときに被せ貼り合わせる、ベロと呼ばれる部分を見て更に眉をひそめた。
 そこには花園の戦士らしく、柔らかな色合いのモスグリーンの蝋でバラのスタンプの封蝋が押してある。そのベロの端が微かに波打っていた。
 指を掛ける。軽くひっかくと、ベロはあっけないほどペリリ…と簡単に取れた。
「糊が弱っている…」
 そして…。
「滲んでいるのはベロの端の位置に当たる文字だ」
 ギルはもう一度、便箋を封筒から出した。
「どういうこと?」
 ステラの問い掛けに「多分…」と腕を組んで、コンロのケトルを見る。
「昔、子供の頃やったころがあるんだけど、受け取り主に気付かれないように、こっそりベロに蒸気を当てて糊を緩ませて開けると、たまにこんな風に中の文字が滲むんだ」
 それにそっくりなんだよ。説明する義弟に「ギルちゃんって子供の頃、本当に何やってたの……」ステラが呆れる。
「でも、それって誰かがギルちゃん宛の手紙をこっそり読んでいたってこと?」
「う〜ん」
 唸りながらギルが綴った手紙の束を見返す。
「……同じような滲みがある奴があるな……」
 ギルは席を立った。自分宛の他の手紙も見てみようと、部屋に向かう。
「ギルちゃん、なんだったら、私やフレッド宛の手紙も見てみる?」
 こういうときの義弟の勘は当たることが多い。ステラが尋ねる。
「うん。ちょっと気になるからお願い」
「解ったわ」
 なんとなく、背中がむずむずするような悪寒を感じて、ステラはギルと共に部屋を出ると夫婦の部屋に向かった。


 とっぷりと暮れた影烏族の里。町の通りの南の端にある小さな家には、柔らかな灯りが付いている。その居間に
「待たせて悪かったな」
 仕事着の忍び装束から着替え、春夏秋冬、これ一枚で通す作務衣の紐を結びながら千之助がやってくる。
「自宅謹慎が解けたんだってな」
 よっこらしょ、と声を上げて前に座った一週間ぶりに会う幼馴染に、ギルは小さく息を飲んだ。
「千ちゃん……」
 いつも仕事に訓練にと飛び回ってもビクともしない、彼の顔に所作に、ありありと疲れが浮かんでいる。
 絶句するギルに千之助は小さく、これまた疲れた笑みを浮かべた。
「例の事件の姫様に対するカインの物言いから、銀狼とうちの戦士の間がぎくしゃくしてな」
 それが普段の警備や巡回にも出始めている。
「しかも、こういうときに銀狼の先頭に立って調整してくれるアレンがいなくなるし、お前もいないしでな……」
 一族の戦士を纏める身として、ほとほと参っているらしい。今夜もそのことで養父であり、舅でもある頭の直吉と話をして遅くなった、こぼす幼馴染にギルはぐっと膝に置いた拳を握った。
 そういえば滅多に表情が変わることの無い兄も、最近、家で溜息をついていることが多い。
 ノームと銀狼の仲も悪化しているのかも……。
 それで兄も、その調整に苦労しているのかもしれない。
「……ごめん……」
 なのに何も出来ない謹慎中の自分が情けなく、身を小さくして謝る。
「いや、こういう揉め事を納めるのが苦手な俺が悪いんだ。いつもお前に丸投げしてきたツケが回ってきたぜ」
 肩を竦めて千之助は、目一杯、明るく笑ってみせた。
「それに、今日の昼、カインが家に帰ってきてな」
「カインくんが?」
 今日の昼過ぎ、ずっと森を飛び出していたカインが、何の前触れもなくひょっこり帰ってきた。
「それで、アレンが森を出たと聞いて、ひどく驚いて反省しているらしい。アルフさんが明日、しっかり姫様に謝らせると言っていた」
 そうすることでフェスがカインを許し、彼も神妙な態度を取るなら、もう森の戦士達も文句は付けられない。
「これで、少しは治まれば良いがな……」
 祈るように口にした千之助に、女房のお千代が夕餉の膳を持ってくる。団子汁に、切り身の甘味噌焼き、蕪のあんかけに漬け物。小さな器には、温泉卵が揉み海苔を掛けて添えられている。疲れている夫への思いやりにあふれた膳に、千之助は嬉しそうに箸を取ると「お前は夕食は?」と訊いた。
「家で済ませてきたよ」
「そうか。それなら、これの後で一杯付き合ってくれ」
「うん」
 千之助は余り飲む方ではないが、やはりアレンのことで今夜は飲みたい気分なのだろう。
「じゃあ、残り物で悪いけど、おつまみ作るわ」
 お千代が大ぶりの湯飲みになみなみと注いだお茶を膳に置くと、微笑んで台所に向かった。
「ありがとう、お千代ちゃん」
 さりげなく席を外してくれた彼女に礼を言う。
「本当にお千代ちゃんは良い奥さんだよね」
「ああ、ここんところ、特に身に染みているぜ」
 いつもは照れて否定する千之助が、夕餉をゆっくりと味わうように箸を動かしながら、しみじみと頷く。
「で、大事な話があるんだろ」
「うん」
 察して促す彼に、まずは昨日の夕方、ラドから訊いたアレンが森を出た理由らしい話をする。
「……あの馬鹿……」
 アレンが自分達に害が及ばないように出て行ったと聞いて、千之助は嘴の根本をへの字に曲げた。
「……ったく、どこまで人を気遣っていやがるんだか……」
 ゆるゆると首を横に振る。
「それでボクはきっとアーくんは、居場所を求めて落ち着く為に草原に行ったと思うんだ」
「だろうな。というか、もうアレンにはあそこに行く以外ないだろう」
「……うん。あそこが本当のアーくんの居場所だものね」
 幼い日、アレンに一度だけ連れて行って貰った、広い草原と穏やかな白い毛並みの人々に、千之助もまた『ここが彼の本当の居場所でばないか』と思った。
「モール先生がクルト様に、今の銀狼族の族長問題のことを書いた手紙を送ってくれたんだ。クルト様の言葉なら、アーくんが族長になることに反対している古参の戦士達も、聞き入れてくれると思う。でも、その前に、ボク、謹慎が解けたら、兄さんに頼んで草原に行かせて貰うよ」
 草原から森に帰る晩、二人は草原の星空を眺めながら、アレンに本当に森に帰って良いのか?と訊いた。
 そのとき
『オレ、森に帰るよ。だってオレ、二人のことも、お義母さんのことも大好きだし、それに死んだお母さんと約束したんだ。お母さんの代わりにオレがお父さんの側にいるって』
 アレンは笑顔で答えた。でも今はどう思っているのか、それをもう一度訊きに行く。
「アーくん、帰って来ないかもしれないね……」
 だとしても、あれからも散々苦労した幼馴染の決断なら仕方ない。
「……ああ。でも、そんときは笑顔で草原に見送ってやろうぜ」
 膳の上の物を平らげ、千之助がゆっくりと茶を飲む。
「お千代、晩飯、旨かった! 終わったから、ギルの分と合わせて二本、つけて持ってきてくれ!」
 やりきれない空気を破るように、彼は台所に声を掛けた。


 鶏肉のつくねに、柚子の黄色い皮を散らした蕪の千枚漬け。干し魚の炙りにたくあんとおかかをゴマ油で炒めたもの。残り物という割には、どれも丁寧に作られた、お千代のつまみを前に熱燗を啜りながら、千之助はギルの持ってきた手紙の綴りを眺めた。
「……なるほど……確かに、俺達がやったときと同じ跡がある」
 森で名を馳せた、元『悪童三人組』のリーダーの言葉に、お千代が袖で口を押さえて笑う。あの時は森でも評判の浮気者の父親から、友人と母親を逃がす為に、母親宛の手紙を街の郵便局から直接受け取って渡し、父親の浮気相手との手紙をこっそり見て、彼が出掛ける日にちを調べ、二人を森の外の母親の実家に逃がしたのだ。
「……フレッドさんとお前の仕事の手紙と……トニーからの手紙に見られた跡があるのか?」
「うん。念の為に義姉さんの手紙やボクや兄さんの個人的な手紙も調べてみたけど、それには無かった」
 ステラが妹のマギーとやりとりをしている手紙や、フレッドやギルの森の外に出た友人との手紙には開けられた跡が無い。
「それと、もう一つ気になるのが……」
 ギルは綴りを数枚めくった先を指した「この一枚、それまでのものと字が変わっていると思もわない?」
 千之助が眉根に皺を寄せる。確かに前の一枚より字が所々乱れているところが多くある。
「似せて書くとこうなるよな……」
 乱れたところが本来の字だ。これもまた、やったことがある二人は頷き合った。
「去年の年末、姫様がカトリ様の手紙に同封されていたはずの花のカードを無くしたって泣いたの覚えている?」
「ああ、旦那と部屋を徹底的に掃除して調べたが、見つからなかったってな」
「よく考えたら、それもおかしいんだよね。あれだけ姫様を可愛がっているカトリ様が、姫様が心待ちにしているカードを入れ忘れるわけがないし、そんな大事なカードを、いくら、ちらかし魔といえ姫様がなくすわけない」
「……そうだな」
 千之助は、もう一度綴りに目を通すとギルを見た。
「つうことは……」
「姫様宛の手紙にも同じことがされている可能性が高い」
 その開封の途中で、花のカードが封筒から落ちたかして無くなってしまったのだろう。
「しかし……誰が何の目的でこんなこと……」
「それを調べたいんだけど、これだけでは……ね」
 ギルの言いたいことを察して、千之助が隣のお千代に声を掛けた。
「お千代、俺宛の最近の手紙を封筒ごと全部持ってきてくれ」
「はい、お前さん」
 お千代が奥の部屋に向かう。
「十分な証拠がないと、街の警備隊にも話を持っていけないしね」
 ありがとう。礼を言って、少し温くなった燗酒の杯を飲み干す。ギルの前にお千代が文箱を二つ並べた。
「こっちがうちの人の」
 真っ黒な漆塗りの文箱を指す。
「で、こっちがあたしの」
 隅に桜の花の蒔絵の描かれた、嫁入り道具の文箱をお千代は指した。
「良いの? お千代ちゃんのも見て」
「ええ。森の一大事ですもの。遠慮無く全部調べて」
 にっこりと笑って、お千代は夫に膝を向けた。
「お前さん、あたし、明日、実家に行って、おとっつあんとおっかさんの手紙を貰ってくるわ」
「ああ、頼む。それと長老のじいさんとこからも貰ってきてくれるか?」
「はい」
 影烏族の先代の頭、長老十郎太は今もお目付役として、直吉や千之助の相談に乗っている。
「ギルさん、明日貰った手紙をギルさんの家に持って行くわね」
「ありがとう。義姉さんに、お千代ちゃんから受け取っておくように頼んでおく。ボクは明日は銀狼族の族長のところに行って、族長とアーくんの手紙を貰ってくるよ」
 小さくほっと息をついて、ギルは甘辛いたれをまぶした、つくね団子を口に運んだ。
「本当にお千代ちゃんは良い奥さんだね」
 笑みがこぼれる。
「当たり前だ。俺が惚れた女だぞ」
 酒のせいか、つい千之助が本音をポロリと口に出す。
「……お前さん……」
「……いや……その……」
 揃って赤くなった二人を前に、思わずギルは吹き出した。
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